第4話
  真っ青な空のもと・・・ヤナセではしゃぐ
 
 
 

 「面白い車があるんですけど、乗ってみますか?」
 電話をかけてくれたのは、自動車ジャーナリストのSさん。ネコパブからも本を出されてる方ですね。面白い車とはメルセデスベンツ−ウニモグU400ZA軌陸車だ。

 もぉウニモグと言えば、オフロード派の私としては憧れの車。その威圧感といい、走破性といい、オフロード車としては右に出る車はない。
 その上、軌陸車といえば鉄路用の車輪が付いて、軌道上まで走れるという。鉄道に少々かかわることを普段やっていても、自分で運転できる機会など、めったなことではないのだ。この試乗会、断る理由はなにもない。


ベンツ乗用車と同色のウニモグ。これは狭軌道車、鉄の写真にゴムタイヤの動力を伝えて動く。
2枚目の写真は、歴代のウニモグ。私としては、丸い今回の形式よりも、前回の角型の方が実は好きだった。
 

 
 梅雨の快晴の日、某所ヤナセの敷地内に敷かれた標準軌狭軌併用軌道、そこにベンツ乗用と同色のウニモグが、どんと鎮座している。近くから見上げれば、山のよう、さすがの存在感だ。

 まずは挨拶代わりの撮影会。カッコいい。ファインダー越しに見ると、なおさらカッコいい。もちろんそのまま見ても文句ない。ひととおり撮影したところで、いよいよ試乗。
 3段のステップをよじ登り、シートに収まる。キーをまわし、アクセサリーオンでコンピュータが起動。インパネに諸々の表示が出る。サイドパネルには動輪への接地圧がデジタル表示。エアサスのシートはぐぐっつと持ち上がる。

おおっ!なんか、いいぞウニモグ!

想像してなかったハイテク装備に感動。シートが持ち上がるとなおさら視界が高くなる。線路越しに見下ろす風景は気分がいい。またまた電車の運転手がうらやましくなってきた。
 狭軌用の車両は、ゴムタイヤが持ち上がり、鉄輪の軸に接地して動力を伝えるタイプ。従ってギアを咬ませた形になるので、リバースで前進する。
 これがわからん。

「え〜と、レバーをこっちに向けると・・」「いやいや、ここのボタンを強く押していったんニュートラルにして!」「ああ、前進じゃなくてこのボタンを押しながらレバーを後ろに引いて・・」・・??・・ どうにかこうにか準備が出来てアクセルを踏み込むと、するすると動き始めた。
 意外なほど静かな車内、そしてレールのごろごろという響きが伝わってくる。これは、紛れもない鉄道車両!そしてジョイント通過時には「たん、たん」2軸車特有の通過音がする。思わず南部縦貫のレールバスを思い出してしまった。
 面白い。これは面白い!「ごろごろ、たん たん」「ごろごろ、たん たん」わははは、思わず笑いがこみ上げてくる。これは短い線路じゃなくて、どこか廃線跡にでも持ち込んで思いっきり走りたい。(残念、貸し出し用の広報車はない・・)巨大なフロントガラスから青い空を見ると、ホンキでそう思えてくるのだった。
 続いてレールに乗ったのは、標準軌用のウニモグU400ZW。こちらはゴムタイヤが直接レールに乗って走るタイプだ。普通の車と違うのは、前後に軌道確保用の2軸先輪が付いている。2軸の動輪と合わせて、機関車で言うところの 2−B−2型だ。
 今度は、前進は前進、後進は後進でわかりやすい。走り出すとさすがにゴムタイヤ、舗装路を走っているのと変わらないスムーズさ。ただ違うのは先輪がジョイント通過する時の音だ。

「た たん、た たん」

妙にうれしいぞ、軽快な通過音は、まるっきり単行のディーゼルカーの音。最近ロングレールが増えて、聞かれなくなった列車の音そのもの。これまたはしゃぎながら前へ後ろへと走り回ったのだった。

 ・・・その夜

「ウニモグいいなぁ、欲しいなぁ」と、つぶやくと、

ヨメ:「どこ走らすのよ!線路さえ走れれば何でもいいの(笑)」

 ・・・いや、何でもいいわけじゃ・・・どこ?・・・そこまでは考えてない・・・

娘:「いったい、いくらするの?」

・・・2850万・・・
  

取材後乗せていただいた、Sさんのフェラーリ。
この日はものすごく背の高い車と低い車に乗れてご満悦!・・・さすが、Fの加速は・・・すごい・・・で、こっちも高い(笑)

 協力:ヤナセ、ジャーマンカーズ(アポロ出版)