Vol. 1

 
木曽路の秋 中央西線
  
 第46週 11月12日〜11月18日
 
  

藪原−奈良井間 カラマツ林を背に走る特急しなの
 

        この写真はDVD「魅惑の鉄道風景 七曜週めくり」の映像から取り込みました
  
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 「木曽路はすべて山の中である」とは、島崎藤村の「夜明け前」の書き出し。実に言いえて妙である。
 中山道木曽路は贄川宿−馬籠宿間の11宿、現在の鉄道では少々コースが離れているものの、贄川−南木曾間の14駅にあたる。この間の車窓は「すべて山の中」だ。
 木曽路の中で、もっとも難所として知られるのが薮原駅のある木祖村と奈良井駅のある楢川村の間にそびえる鳥居峠だ。峠の標高は1197メートル。木祖へ下る水は木曽川となり太平洋に、楢川に下る水は奈良井川へと流れて日本海にそそぐ。峠は分水嶺になっている。
 今では名古屋方面から信州を目指す特急列車が、鳥居トンネルを軽快に走り抜けていく。
 
 
 11月も半ばになると、木曽路の風景も晩秋の様子になってくる。秋の色で鮮やかだった山々は次第に深い色合いへと変わってくる。その頃鮮やかな黄色に色付くのがカラマツの林だ。
 古くから木材の産地として名高い木曽には、このカラマツの林もたくさん見ることができる。特に鳥居峠近くではカラマツの林が多く、美しい色合いを車窓から見ることができる。
 鉄道の撮影をしていて、このカラマツの色付きはぜひとも撮りたい被写体だ。ところが納得のいく写真を撮るのが意外なほど難しい。年によって時期はもちろん、色の付き方がまったく違うのだ。ある年には木の先端だけが黄色に後は緑のままであったり、ある年には緑から一気に枯れ色となって針のような葉が落ちてしまったり・・・林全体がきれいなレモン色からオレンジへと塗られて行くことが理想なのだが、本当に思うようにならない。
 この映像を撮影した年のカラマツは、久々の当たり年だった。
 秋の夕刻、きれいな黄色になった林に真っ青な空、少し赤みを帯びた斜光に照らされて銀色の特急しなのが軽やかに峠へと向かっていく。思い描いた秋の木曽路に出会うことができた。こんな日があるから風景を巡る鉄道撮影はやめられない。
 
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ワンポイントフィールドガイド:中央西線 藪原−奈良井
 
 藪原駅から鳥居坂トンネルの区間で、カラマツ林を背に走る列車を狙うポイント。
 A地点は鳥居坂トンネル近くにある道路のオーバークロスからトンネルを飛び出してくる列車を撮影できる。背景の山にはきれいなカラマツ林が広がっている。
 同じくA地点から藪原駅方面を見ると、直線を行く列車を見ることができる。線路の右側には藪原の町に繋がる谷間が続いているので、広い雰囲気の写真を撮ることが出来る。
 B地点はタイトルの映像を撮影したポイント。街を抜けて細い山道をトンネル方向へと向かう、右手に中央西線の高架が見えるところがポイント。
 いずれのポイントも午後遅いほど光線状態は良くなるが、3時を過ぎると陽が陰り出すので注意が必要
 藪原駅からB地点までは約3キロ、更にA地点までは1キロ
 
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 実際に撮影に行かれる場合は、週刊週めくりメニュー下にある、ご注意を必ずお読みください

  記事中の「中央西線」の正確な名称は「中央本線」でが、東京−塩尻間と名古屋−塩尻間の性格の異なる路線を区別するために、呼称の「中央西線」と記載してあります。
 
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